環境質 予見分野

研究内容

1.水域における病原微生物による汚染実態と由来の推定と制御

水環境中にはさまざまな病原微生物が存在し、なかでもウイルスは、水中での生残性や塩素消毒に対する耐性が高く、薬剤耐性細菌とともに先進国でも制御が必要と認識されています。本研究では、琵琶湖や淀川流域を対象水域として、最新の次世代シーケンサ等を用いて病原ウイルスを含む健康関連微生物による汚染実態と由来を把握するとともに、病原微生物汚染に対する雨天時のCSOやSSO等未処理下水による影響と制御方法を研究しています。また、感染性のあるウイルスを定量する技術の開発にも挑戦し、将来の環境基準の設定や消毒技術の開発に貢献します。

2.競争力のある水の再利用技術の開発に関する研究

持続可能な水資源確保、環境管理、エネルギー管理の視点から、水の再利用の研究の必要性は、世界的に高まっています。本研究では、MF、UF、NF、ROなど革新材料を含む有機・無機膜やオゾン・UV・光触媒などの酸化技術やMBRなどの生物処理と組み合わせた水再生技術を実験室、パイロット、実証スケールで検証し、再生水の水質やリスクを評価し、その安全性と処理エネルギーやコスト削減の研究を行っています。再生水規格のISOや国内外の再生水利用に貢献し、2030年の国連のSustainable development goals(SDG)実現に貢献します。

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3.変換過程を考慮した日用化学物質の管理手法と水環境中挙動の把握に関する研究

現在の化学物質管理の法体系では、都市の水循環(上下水道、河川流下)で化学物質が受けうる化学的、生物学的な変化(変換過程)やそれにより生じる化学物質については考慮されていません。そこで、変換過程を考慮した生成能試験を日用化学物質や環境試料へ適用し、既存の管理体系では見過ごされている化学物質の存在を明らかにします。また、液体クロマトグラフ-高分解能質量分析計(LC-MS/MS)や最新のLC-四重極飛行時間型質量分析計(QTof-MS)を駆使し、前駆物質や生成物の同定に挑戦します。以上の研究成果より、変換過程を考慮した化学物質の都市水循環における新規管理手法を提案します。

4.In vitroバイオアッセイを利用した水環境中の医薬品の毒性評価に関する研究

これまで、医薬品による水環境の汚染が国内外で数多く報告されています。生体内で特異的な生理活性を発揮するようにデザインされているため、ヒトを含む生態系に悪影響を与える可能性が懸念されています。年々増え続ける医薬品、それに伴う水環境の汚染状況の把握に向け、世界的にも先進的な研究、特に医薬品の生理活性を測定できるin vitroバイオアッセイとLC-QTof-MS分析を組合せ、水環境中の医薬品の生理活性の実態把握や水生生物への影響を解明する研究を進めています。さらに、前述の各種の下水処理技術の検証から、生理活性をどの程度まで削減すれば安全であるか提示することも目指します。

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